パワハラ110番

そのパワハラ、該当するのは“何” 裁判?

パワハラで裁判を起こす。
…口で言うほど簡単なことではありませんが、
仮に、そう決断した場合のことを想定して、
「どうすれば良いのか」考えてみましょう。

 

まず、自分のパワハラが、どの裁判の対象になるのか判断しましょう。
というのも、「裁判」といっても、実際には次の4種類があるからです。

 

全国の裁判所が受け付ける裁判のうち、約半数は民事裁判。
これは、生活に関する事件(要するに人間同士のトラブル)について行われる裁判で、
ベースになるのは民法です。

 

そして二つ目が、ドラマや小説でおなじみの刑事裁判。
刑法が適用される“犯罪事件”を取り扱う裁判です。

 

三つめは、家事裁判。
家庭における事件について行われる裁判で、「家事審判法」に基づきます。

 

最後は、少年裁判。
非行を犯した少年や、その可能性がある少年に対して
教育的配慮による処遇を求める裁判です。

 

パワハラ裁判を扱うのは、上記4種類のうち、民事裁判 or 刑事裁判。
いずれも原則的に3回まで行うことができることになっています(「三審制度」」

 

最初の裁判を「第一審」と呼び、
簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所のいずれかで行われることになります。
その後、第一審での判決に不服ならば高等裁判所に「控訴」(第二審)。
それでも不服ということになれば、最後は最高裁判所へ「上告」します(第三審)。

民事裁判の場合

パワハラ被害で民事裁判を起こす場合、
まず、裁判所に訴状を提出することがスタート地点です。

 

「訴状」とは、のような内容で構成される書類のことです。

 

・原告と、訴えられる側である被告の住所・氏名
・原告がどのような審判を求めているのか、その請求内容の趣旨
・上記請求の原因(理由)

 

ちなみに、裁判に民事裁判で提出する訴状の書式は、
裁判所のサイトから書式をダウンロードすることも可能です。

 

裁判所>裁判手続きの案内>民事訴訟・少額訴訟で使う書式

 

※特に“パワハラ用”と限定された書式はありませんので
この内容を参考にして自作することになります。

 

この訴状は、裁判所用・自分用・相手方(被告)用に3通必要。
簡易裁判所で配布している書式は、3枚の複写式になっています。

刑事裁判の場合

パワハラ行為の中には、ぐる・蹴るなどの暴力行為や脅迫、
土下座を強要するといった侮辱行為…等、刑法に触れるケースも多々あります。

 

この場合は、刑事裁判の対象。
刑事告訴をして相手の処罰を求めることができます。

 

刑事告訴とは、犯罪の被害者本人や
その法定代理人(被害者が20歳未満の未成年の場合には、親)が、
警察官や労働基準監督署長などの捜査機関または検察官に対して
自分が受けた犯罪事実を申告し、犯罪者の処罰を求める「意思表示」のこと。
刑事訴訟法241条1項により、
「書面または口頭で、検察官または警察に」することになっています。

 

ちなみに、誤解されがちですが
警察に「被害届」を提出しただけでは告訴をしたことにはなりません!
被害届とは、あくまでも被害を申告することであり、
加害者の処罰を求める意思表示までは含まれていないからです。
被害届を受理しても、捜査機関には捜査する義務は発生しないのです。
ですから、パワハラ加害者に制裁を下したいと思うのであれば、
「告訴」=裁判に踏み切るする勇気が必要です。

 

法律上は口頭でも問題ないわけですが、スピーディーに対処してもらうためには、
「告訴状」を作成して捜査機関に提出するのがベスト。
…というのも、警察署や労働基準監督署は刑事告訴に積極的ではないからです。
なぜなら、証拠が十分に完備されていないと、
検察官から「証拠不十分」とみなされ「起訴」まで持ち込めないから。
捜査が無駄になることを恐れるため、
「なるべく刑事事件にせず、民事で解決してもらおう」という風潮があるのです。
ですから、口頭で「告訴したい」と申し出ても、説得されることも珍しくありません。

 

この「告訴状」には、主に次の内容を記載することが求められます。

 

・犯罪被害に遭った場所
・被害に遭った日時
・どのような被害にあったのか

 

実際に裁判に踏み切ろうとしても、記憶が曖昧で告訴できなかった…
という可能性も考えられますので、刑事事件に該当するパワハラ被害に遭った際は
その内容を詳しく書き留めておくと良いでしょう。
可能であれば、証拠品や、被害を証言してくれる証人を確保できるとベターです。

 

※被害者本人が死亡した場合は、その配偶者、直系の親族(親・子供・孫)、
兄弟姉妹が告訴→裁判に臨むことができます。