パワハラ110番

ルサンチマン=逆恨み

哲学者、フリードリヒ・ニーチェが生み出した言葉に、「ルサンチマン」があります。
これは、簡単に言うと"逆恨み"すること。

 

例えば、仕事の業績が悪い人が、業績トップの人を見て
「アイツは何か裏で小賢しい手を使っているに違いない」
「業績が悪い今の自分は本当の自分ではないんだ」
…と、自分自身を慰めようとします。
これは、弱い者が現実を受け入れられずに強い者を恨んでいるだけ。
自分を改善しようという努力をせず、
うまくいかないことを世の中や他者のせいにしているわけです。

 

上記のような弱さは、人間誰しも持っているものですが…。

 

このルサンチマンに囚われてしまうと、自己正当化することばかりがうまくなってしまい、
「自分自身を乗り越えて前へ進んでいく」
…という前向きなアクションが起こせなくなってしまいます。

 

実は、パワハラの根っこにも、この"ルサンチマン"がはびこっているのです。

ルサンチマンから生まれるパワハラ

パワハラをする上司の心の根底に、
「自分の権威を示したい」
「誰かを見下したい」
…という気持ちがあります。

 

なぜそんな思いに支配されてしまうかというと、
要するに自分に自信がないからです。
現状の自分を受け入れられない、誰かをいけにえにしなければ自分の立場を保てない…。
そんな不安感を、スケープゴート=犠牲者を作り出すことでごまかしているわけです。
つまり、自分自身の本当の姿を直視できていないわけですよね。

 

これは、ある意味ではルサンチマンに陥っている状態。
「本当はこんなハズじゃない」という苦しみのエネルギーを、
「お前が悪い」「お前のせいだ」とパワハラ被害者の責任に転嫁することによって
なんとか自分自身を保っているのです。

パワハラ被害が生み出すルサンチマン

逆に、パワハラ被害を受けている人もルサンチマンに陥りやすいので
注意が必要です。

 

「私は本当はもっと良い成績を出せるハズなんだ。
でも、パワハラ上司がそれを妨害しているんだから、仕方がない」

 

「仕事に対するモチベーションが上がらないのは、パワハラ上司のせいだ」

 

「私をいじめているあのパワハラ上司は、きっと不幸になる」

 

「あんな会社、辞めて良かったよ。どうせすぐにつぶれるだろうから」

 

…いずれも、自分が置かれた境遇を他人のせいにしていますよね?

 

確かに、パワハラは理不尽な行為ですし、
被害者にとっては迷惑この上ない行為です。
被害者は、悪くない。…それは周知の事実です。

 

しかし、だからといって状況を変える努力もせず、
ただただ"諦める""自己正当化して現実に戦いを挑まない"
…というスタンスでは、人は幸せにはなれません。
変な"負け癖"がついてしまいますので、
転職先でもまた同じようなパワハラ被害に遭ってしまう可能性も否定できないでしょう。

 

ツイていない不平等な運命も丸ごと受け入れて、それを肯定し、
自分をより高いところへ持っていくための努力を惜しまない。
…これができて初めて、ルサンチマンを克服できたと言えるのです。

 

"パワハラ被害者"という自分の立場に甘んじてしまいそうになった時、
相手を変えるのではなく自分自身が変わろうという前向きな気持ちを持てなくなった時…
それは、ルサンチマンに支配されている状態かもしれません。
胸の中に"誰かのせいにしたい"という思いが生まれている時は、ご注意を★