こんな言葉はアウトです。パワハラワード集
表情、しぐさ、行動。人が自分の気持ちや考え方を相手に伝える方法は色々あります。とりわけ「言葉」は、人の気持ちをストレートに表すものでしょう。また、同時に、相手の受け取り方次第では大きな誤解を生みだすものでもあり、人はしばしば、言葉を巡るやりとりについて対立します。
パワハラに関しても、言葉の問題が話題の中心となることが多いようです。実際に裁判沙汰になったケースでも、「侮辱的な言辞であり、名誉感情を毀損するものである」、「その指導は人格を否定とも捉えられる」と判断されている例があります。
では、どのような言葉がパワハラに該当するのでしょうか?
日研化学事件
判決日 平成19年10月15日 東京地裁
当事者 国(処分庁:静岡労働基準監督署長)
判決
この判例は、パワハラに関する裁判の中で最も有名なケースです。被害者の男性はうつ病を発生して自殺しており、その遺族が補償年金給付不支給処分を不服として争いました。
上司は、静岡営業所の係長。被害者に対して「仕事をするための基本的な心構えができていない」、「身なりに無頓着で、基本的な生活習慣自体に問題があった」と主張しましたが、裁判では「過度に厳しく、キャリアを否定し人格・存在自体を否定するものだ」、「態度に嫌悪の感情がある」、「社会通念上、客観的に見て、精神障害を発症させる程度の過重なものである」、「トラブル解決が困難な環境にあった」という判断が下されました。
また、業務に起因して精神障害を発症したこと、自殺に追い込まれたことも認められ、結果としては遺族補償年金不支給処分の取り消しが命ぜられています。
中部電力事件
判決日 平成18年5月17日 名古屋地裁
平成19年10月31日 名古屋地裁
当事者 国(処分庁:名古屋南労働基準監督署長)
判決
この判例でも、被害者はうつ病を発生して自殺しており、その遺族が補償年金給付不支給処分を不服として争いました。
上司は、環境整備課の課長。主任に昇格した被害者に対して、能力不足を明記したり、業務に全面的に責任を負う文章を作成するよう要求したり、感情的な叱責を繰り返したりしていました。
加害者は「仕事に積極的に取り組むための集中力を出すという動機付けになればなあという淡い期待感をもって、勤務中に指輪を外すのも一つの手段かもしれないぞということを言った」と主張しましたが、裁判では「仕事の範疇を超えた感情的な叱責であって、他の職員にも聞こえる場でこのような叱責が行われるのであれば、その指導は人格の否定とも見るべきである」、「指導には問題があったと言わざるを得ない」という判断が下されました。
また、業務以外の心理的負荷(新築への転居、負債の発生等、家庭での出来事)はいずれもうつ病発症の半年以上前であることから、業務に起因して精神障害を発症したこと、自殺に追い込まれたことも認められ、結果としては遺族補償年金不支給処分の取り消しが命ぜられています。
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