パワハラ110番

愛ある「指導」を見極めよ

ここまで、第1章では、パワハラという言葉が生まれた背景、そしてパワハラとはどういう行為なのかを判例を交えながら見てきました。第2章では、職場で今どのようなことが起きているのかを、統計的なデータを元にご紹介していきます。
その前に、一つだけ心に留めておいていただきたいことがあります。それは、パワハラという言葉の使い方を誤ってはいけないということです。クオレ・シー・キューブの岡田代表も指摘しているように、最近は、パワハラという言葉が独り歩きして様々なトラブルの元になっているケースも少なくありません。
例えば、

 

  • 「私の能力を生かすのが上司の仕事なのに、何もしてくれないのはパワハラじゃないか?」
  • 「仕事を一から十まで教えてくれるのが上司の仕事のハズ。それをしてくれないのに仕事が遅い、業績が悪いと叱責するのはパワハラ!」
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    …といった相談も増えているよう。どんな職業に就いても、あるいはどんな上司に当たったとしても必ず生ずるであろう処遇や業務上の不平不満を「パワハラ」の一言で片づけてしまうのは間違っています。しかし、残念なことに、上司と正面から向き合ってコミュニケーションをとろうという努力をせず、全てをパワハラという言葉に置き換えることで物事を解決した気分になっている方も多いのです。
    パワハラを、職場に対する不満から逃れるための言い訳にするのは社会人として、人としてズルいこと。結果として、部下の活躍に期待して目をかけてくれる上司の「愛」を裏切ることになってしまいます。
    自分を想ってくれている人は誰なのか、その判断を誤らないようにしたいものです。