パワハラ110番

労災保険による補償とは?

業務災害であれ通勤災害であれ、一度「労働災害」として労働基準監督署に認定されれば、国の「労災保険(労働者災害補償保険法)」で様々な補償を受けることができます。この保険は、農林水産業の一部を除き、従業員を1人でも雇用していれば全ての事業所(個人事業含む)に強制的に適用され、保険料を納めることが義務づけられます。(※万が一、その会社が違法に保険料を未納であったとしても、労働者は労災の適用を受けられることになっています。つまり、100%労働者側に有利な保険制度なのです)

 

 労災保険とは、具体的には、労働者が負傷した場合、疾病にかかった場合、障害が残った場合、死亡した場合等について、被災労働者本人又はその遺族に対し所定の保険給付を行う制度です。そもそも、業務上災害については、労働基準法で「使用者が療養補償その他の補償をしなければならない」と定められていますが、事業主に任せきりでは、会社側の補償負担は相当なものになり、被災労働者が確実に補償を受けられないケースが出てきてしまいます。そこで、被災者側を守る意味で設けられたのがこの労災保険制度。ドライバーが、万が一の事故に備えて入会するのが「自動車保険」なら、人を使う事業主が万が一の災害に備えて入会するのが「労災保険」というわけです。これならば、被災者は企業側の財政状況がどうであれ、確実に補償を受けることができます。(※ちなみに、被災労働者が労災保険による補償給付を受けた場合には、事業主側は労働基準法の補償義務を免除されることになっています)

 

この労災保険の加入は事業場ごとに行うものであり、労働者ごとではありません。つまり、その事業場に使用されている労働者であれば、正規・非正規問わず保険給付を受けることができます。パートでもアルバイトでも派遣労働者でも、業務上災害又は通勤災害により負傷等をした場合には補償を受ける権利があるのです。

 

ちなみに、似たような保険制度として「健康保険」がありますが、健康保険法では、「労働者の業務以外の事由による疾病、負傷、死亡等に関して保険給付を行う」と定められており、業務上災害については給付を受けることができません。病院で手当を受けたときの治療費については、その病院に労災の申請書を提出すれば、病院から労働基準監督署(労基署)に回送される仕組みになっています。(図表2-2-1を参照)この申請書は、労基署で手に入れることができますし、厚生労働省のHPからダウンロードして使用することも可能です。

 

厚生労働省HPから
ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 労働基準 > 労災補償 > 労災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken06/

 

労災保険給付には図表2-2-2のような種類があり、それぞれ請求ルートや提出書類の様式が異なります。例えば、労働者が、業務上又は通勤により負傷したり、疾病にかかって療養を必要とするときは、「療養補償給付」を申請することになります。療養(補償)給付には、@労災指定病院等において無料で治療を受けられる「療養の給付」と、A労災指定病院以外の病院等で療養した場合にその費用全額を支払い、その相当額の支給を受ける「療養の費用の支給」とがあります。(図表2-2-2を参照)

 

療養保障給付の請求

 

 

図表2-2-2 「労災保険給付の種類」 (参考:財団法人労災保険情報センターHP)

保険給付の種類

支 給 事 由

療養

(補償)給付

(注1)

療養の給付

(注2)

業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関等で療養する場合

療養の費用の支給

(注3)

業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養する場合

休業(補償)

給付

業務災害又は通勤災害による傷病に係る療養のため労働することができず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合

障害(補償)給付

障害(補償)年金

業務災害又は通勤災害による傷病が治ったとき(注4)に、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合

障害(補償)一時金

業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合

遺族(補償)給付

遺族(補償)年金

業務災害又は通勤災害により死亡した場合(法律上死亡とみなされる場合、死亡と推定される場合を含む。)

遺族(補償)一時金

@遺族(補償)年金を受取る遺族がいない時

A遺族(補償)年金の受給者が失権し、他に遺族(補償)年金を受けることができる遺族がない場合で、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき

葬祭料

(葬祭給付)

業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行う場合

傷病(補償)年金

業務災害又は通勤災害による傷病が、1年6か月を経過した日、又は同日以後において治っておらず、傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合

介護(補償)給付

障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の受給者で、介護を要する場合

二次健康診断等 給付

事業主の行う健康診断等のうち直近のもの(一次健康診断)において、次のいずれにも該当する場合

@検査を受けた労働者が、血圧測定、血中脂質検査、血糖検査、腹囲の検査又はBMI(肥満度)の測定の全ての検査において異常の所見があると診断されていること

A脳血管疾患または心臓疾患の症状を有していないと認められること

 

(注1)
業務上災害による傷病に必要な給付を「療養補償給付」といい、通勤災害による傷病に必要な給付を「療養給付」といいます。これらを合わせて「療養(補償)給付」といいます。
「休業(補償)給付」等についても同様です。

 

(注2)
「療養の給付」とは、療養の現物給付、すなわち労災病院又は労災指定医療機関等で被災労働者に無料で療養の給付を行うことです。この場合被災労働者は無料で療養を受けられ、療養に要した費用は直接医療機関等に支給されます。

 

(注3)
「療養の費用の支給」とは、療養の費用の現金給付、すなわち労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養した場合、療養に要した費用全額を被災労働者が支払うことになりますが、その相当額を被災労働者に現金で支給することです。

 

(注4)
「治ったとき」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなったときをいいます。
これを「治ゆ」といいますが、必ずしも元の身体状態に回復した場合だけをいうものではありません。