労災が認められないケースとは
労災は、基本的には被災した本人、本人が死亡した場合にはその遺族が、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に申請します。しかし、2-2-1で述べたように、全てのケースが「労災」と認められるわけではありません。その理由としては、次のようなことが挙げられます。
会社が非協力的である
労災申請するということは、すなわち、会社の業務中に事故があったことを認めるということになります。会社側としては、世間体や会社の保険料の料率が上がってしまうなどの理由から、できれば労災とは認めたくないという思惑があります。そのため、労災を隠そうとしたり、労災を認めようとしなかったりする傾向があるようです。本来であれば、会社には社員が労災を申請する際に協力する義務があるのですが、協力するどころか労災の存在をもみ消そうとするケースもあるため、裁判沙汰になることも少なくないのです。
「業務起因性」を巡る問題
作業中に製造の設備で指を切った、作業中に有害なガスを吸って倒れた…という事故であれば、業務との関連性は一目瞭然です。しかし、うつ病などの「心因性の病気」は、本当にそれが業務に起因する症状であるのかどうかの判断が難しいところ。「もともと持病があったのではないか」、「仕事以外のプライベートの事情は全く関係ないのか」という点が争点となります。労基署に「必ずしも仕事に起因するとはいえない」と判断され、労災適用が見送られる例も少なくないのです。
そんな中、2-1でご紹介した通り、「業務による心理負荷」を評価するための「心理的負荷評価表」の内容が見直されました。これにより、今までは認められなかった事案が「労災」として認定される可能性が高くなったと言っても過言ではありません。裏返せば、こうした改正を余儀なくされるほど、職場で心理的に追い詰められていく労働者が少なくないということです。その原因を追及していく上で、職場のパワハラは避けては通れない問題なのです。
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