パワハラ110番

スケープゴートとは?

子供のいじめについての議論の中でよく登場する言葉に、
「スケープゴート」という心理学用語があります。
これは、ある集団の内部にある問題が、その集団内の"個人"に押しつけられ、
その個人がいわば"身代わり・犠牲"になることによって
結果としてその問題の根本的な解決を先延ばしにすることです。

 

スケープゴートの起源は、ヘブライ聖書。
古代ユダヤでは、年に1度、「贖罪のヤギ」という儀式があります。
これは、イスラエルの人々の罪をヤギの頭に乗せて
悪魔のいる荒野に放り出すというもの。
ヤギを生贄にして人々の罪をなかったことにするのです。
ここから転じて、スケープゴート=「不満や怒りの解決のために捧げられた身代り」
といった意味で使われるようになったわけです。

 

このスケープゴートの一例として"いじめ"が挙げられますが、
実はパワハラもスケープゴートと無関係ではありません。
会社や部署、グループが抱えている問題の解決を、
パワハラ被害者一人を犠牲にすることによって
一時的に先送りにしているとも考えられるのです。

 

ですから、パワハラを根本から解決するためには、
その企業、部署、グループにくすぶっている問題を洗い出し
そちらを優先的に解決することが大切なのです。

パワハラとスケープゴート

パワハラが起こりやすい集団というのは、
組織が組織として正常に機能していないケースが多いようです。

 

具体的には、指示命令の系統がしっかりと確立していなかったり、
過去にもパワハラ問題を起こした人間が野放しになっていたり、
その部署(またはグループ)だけが物理的、組織的に孤立していたり、
相談窓口が設けられていなかったり…。

 

思うように有給休暇が取れない、
残業代が払われないのは当たり前、
給料が上がらない…といったことも含まれるでしょう。

 

要するに、会社自体が人を大事にしていない会社であり、
「パワハラに対する考え方」が甘い会社なわけです。
こうした会社でパワハラ被害に遭う人は、
会社組織の未熟さゆえの犠牲者と言っても過言ではないでしょう。

 

その会社の誰もが不満や不安をかかえてくすぶっているわけで、
その矛先が、たまたまその被害者に向けられてしまったとも解釈できます。
問題は、待遇面を考慮してくれない会社側にあるのに、
パワハラのターゲットをスケープゴートにすることで、
その問題の本質を解決することから逃げていると考えることができるでしょう。

恐怖支配型上司とスケープゴート

この"スケープゴート"の考え方をたくみに利用しているのが、
"恐怖支配型上司"と呼ばれる種類のパワハラ上司です。

 

彼らは、特定のパワハラ被害者をスケープゴート(いけにえ)にすることで、
「自分に逆らうととどうなるか」を周りの人に見せつけます。
スケープゴートを作ることによって自分の権力を周知し、
自分の支配権を確立しようとするわけです。

 

しかし、よくよく考えてみれば、
いけにえを作ることでしか誇示できない強さは本物ではありませんよね。
そんな形でしか自分の強さを示せないというのは、
ハッキリ言って弱い証拠です。
つまり、ホンモノの実力はないわけです。
誰かにスケープゴートになってもらわなければ自分を保てない。
…つまり、自信がないわけですよね。

 

自分に実力がない分、パワハラターゲットを道具として利用することで、
自身の"支配欲"を満たしているわけです。

 

ホンモノの実力を持った人は、恐怖支配などしません!