パワハラ110番

パワハラのタイプと加害者の特徴を知るA

無責任型

細かい上司も「ウザい」ものですが、責任感のない上司も困ったものです。他社や他部署から厄介な仕事を引き受けてきて、ろくに内容を確認もせずに部下に丸投げ。自分は喫煙室で休憩中…。
怒鳴ったり暴力を振るったりする上司に比べるとかわいいものだと思われるかもしれませんが、これはこれで立派な問題上司です。責任感のないマネージャーは、職場内の人間関係や1人ひとりの業務量にも関心がありません。誰がどんな仕事をして、いつまでにどんな納期を抱えているのかを把握していないわけですから、誰か1人に業務が偏っていてもそれに気付きません。揚げ句の果てには、指導も助言もしなかったにも関わらず「なんだ、アレはまだ終わっていないのか」とキレ始め、責任を部下になすりつけるという有様…。取り返しのつかないトラブルが発生して、社内外に迷惑をかけることも日常茶飯事です。
こうした無責任型上司は、人、特に部下とのコミュニケーションを取るのが苦手な人が多いようです。良く言えば、部下を信頼しきって任せているということになるかもしれませんが、裏返して考えれば、自分に自信がないからなんでも人任せにするのです。
このタイプは、偉そうにしていても自分より上の立場の人に弱い場合が多いので、その人よりも上の上司に直訴して環境の改善を図ると良いでしょう。

 

ことなかれ型

人が好ければ良い上司なのかといえば、必ずしもそうとは言えません。自分の意見が言えず「NO」と断れない上司もまた、部下からみれば困った上司です。
例えば、断れないために外部から余計な仕事をもらってきてしまうタイプ。その仕事を誰がやることになるのかといえば、結局は、その人の下についている部下ですよね。他社や他部署との間に軋轢を生ずることを避けたいがために、外では良い顔をしてしまうのでしょうが、そのツケを押しつけられる部下はたまったものではありません。 
こうした「ことなかれ」タイプは、部内でもリーダーシップを発揮することができません。当然、部内の人間関係で何かトラブルが生じても、あっちでも好い顔、こっちでも好い顔でビシッと仕切ることができないわけですから事態は収束しないでしょう。会社の人間関係は、管理職が間に入って仲裁するとあっさり解決する場合も多いので、実力の見せどころでもあるわけなのですが…。
日本産業カウンセラー協会の調査によると、パワハラの原因として「管理職の指導力欠如」を上げる企業も多いといいますから、良くも悪くもマネージメント能力が職場環境に与える影響は想像以上に大きいということです。
ことなかれタイプは、こちらが強い態度で臨むとひるむケースが多いもの。無理な仕事を押しつけられそうになったら、相手が上司であっても毅然とした態度でハッキリ自分の状況を伝えることです。

 

* * * * *

 

…以上は、一般的によく知られているパワハラ加害者の4つのタイプです。
これに加えて、筆者は、「自己中心型」と類似したタイプで「価値観押しつけ型」というタイプもあるのではないかと考えています。
例えば、意識の根底に次のような価値観を持っている場合、自分の思考に囚われて相手にもその考え方を押しつけてしまうことがあります。

 

新人はだまって上司の言うことを聞いていれば良いのだ
 ⇒新人が自分の意見を口に出す様子を見て、「なまいきだ」と感じてしまう

 

男は仕事ができて一人前だ
 ⇒仕事ができない人を見ると、「男のくせに情けない」と感じてしまう

 

やる気さえあればなんとかなる
 ⇒成績が上がらないのは、本人の気合が足りないからだと思ってしまう

 

…しかし、実際は、新人にも会議で挙手をして質問をする権利は当然認められていますし、外資系では当たり前の行動です。男性でも仕事よりプライベートを優先する人もいれば、仕事一筋のキャリアウーマンもいます。そして、仕事は根性論だけでどうにかなるものでもありません。
こうした価値観に縛られていると、自分の価値観に合わない人を見た時にイライラしたり強いストレスを感じたりするようになります。そしてやがてそれが自分の中だけでは抑えきれずに相手に向かった時…、深刻なパワハラ問題の引き金となってしまうのです。